ナラティヴ・カフェ Narrative Cafe

Diabetes Cafe:糖尿病診療におけるナラティヴ・アプローチ

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「まじめに服薬しているのに効果が出ずに落ち込んでいる患者さん」を励ます

1月 21st, 2017 · 糖尿病療養指導

糖尿病患者さんが真面目に頑張っているのに、なかなか血糖コントロールが改善せず、落ち込んでいる患者さん、結構いますよね。真面目な方であればあるほど、落ち込んでしまうものです。今回は、そんな患者さんに僕がどんな風に声をかけているのか、書いてみたいと思います。

「なかなかA1cが改善しませんね。なぜ、血糖コントロールが改善しないのか、その理由を一緒に考えてみましょう!
一般原則を言うとこうなります。あなたの食事管理の中に是正すべき問題点があれば、薬を変更したり、増やしたりする前に食事管理を改善することを優先します。

でも、もしもあなたの食事管理にまったく問題がないのにA1c値が改善しないとしたら、それは・・・、あなたに薬を処方している私の責任です。つまり、現在のお薬が、あなたの病態に適していない。だから改善しないのだということになるんですね。

そしたら『こらぁ!いい加減にせぇ!』と、私を叱って下さい。この場合、どんなお薬があなたに最適な薬なのかをもう一度調べ直す必要があります。その一番有効な方法が3日間・7ポイント血糖測定です。3日間・計9食の食事記録と1日7ポイントの血糖測定をしていただきます。

そして、その血糖パターンから【空腹時高血糖型】であれば、空腹時血糖値を改善する薬を増量または追加します。また【食後高血糖型】であれば、主に食後血糖値を改善する薬の中から次に使う薬を選びます。この方法の良いところは、こうして3日間・9食の食事記録と食前・食後の血糖測定をしていただくと、食事が原因で血糖値が改善しないのか、薬があなたの病態に合わないから血糖値が改善しないのか?ということも同時に判断できることです。

どうでしょうか?あなたもチャレンジしてみませんか?」

■解説

筆者の日常診療の様子を紹介させていただきましたが、いかがだったでしょうか?
落ち込んでいる患者さんには多少ユーモアを含む指導をした方が良いのではないかと考えました。
「療養指導は楽しく!」が筆者のモットーです。楽しく対話していくためには、患者さんのライフスタイルや考え方を尊重し、自己決定を共有することを心がけることだと思います。

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糖尿病に対して良い感情を持つこと

1月 19th, 2017 · 糖尿病療養指導

■糖尿病は「意味」の病気

糖尿病はという病気は「意味」の病気と言い換えることができるのかも知れません。

「糖尿病は贅沢をしてはいけない」「糖尿病になったら美味しいものを食べてはいけない」「糖尿病になったらお酒を飲んではいけない」「糖尿病の人はケーキを食べてはいけない」など、糖尿病に纏わる、もっともらしい誤解はたくさんあります。
糖尿病という病気を、このように意味づけるように強制されたとしたら、果たして患者さんは「頑張ろう!」という気持ちになるでしょうか? なる筈がありませんよね。

■糖尿病治療の極意は“おいしい生活”を続けること

患者さんの糖尿病に対する感情の大切さはいくら強調してもしすぎることはないと思いますが、日本ではあまり強調されていませんね。例えば、僕は糖尿病と初めて診断された方にはいつも「お願いしたいことは、誰よりも“おいしさ”を大切にした食生活をして欲しいことです。まずいものでお腹を満たすことだけはしないで下さい。誰よりも“おいしさ”を大切にしている限り、この病気に負けることは決してありません。

「あなたが美味しいものを、血糖値を上げずに食べるスキルを教えるのが、私の仕事です」と伝え、料理が苦手な独身男性なら、簡単に作ることができる美味しい料理のレシピーを渡したりしています。

食べたり、身体を動かすことを管理する糖尿病は、本を読んで知識を増やしたからと言って良くなるものではありません。楽しくて、自分らしい暮らし、自分らしい食べ方を維持することが何より大切です。僕は、それを糸井重里さんのコピーを真似て、「糖尿病治療の極意は“おいしい生活”を続けることです」と伝えています。

お酒が好きな方には“適量の晩酌”も薦めています。特に満足度の高い夕食を、家族と心から楽しむことはとても大切なことであると考えています。適量のお酒とはビールなら500mL、ワインならグラス2杯、日本酒なら1合程度を指しますが、僕の飲酒指導については、また別の機会に詳しくお話ししたいと思います。

■自分らしい生き方、食べ方に糖尿病治療を合わせること

人にはさまざまな考え方があります。食べたいものをストイックに我慢してでもお薬に頼らないで頑張りたいという方もおられます。素晴らしいことです。しかし、そういう方ばかりではないと思います。これは個人的な意見ですが、「糖尿病に自分の生活を従わせるのではなくって、自分らしい生き方や食べ方に、糖尿病治療を合わせること」の方がはるかに楽しい生活が送れます。近年、糖尿病治療薬は非常に進歩し、患者さんのさまざまな病態やライフスタイル、個人的な嗜好に合わせたテーラーメイド治療が可能な時代となっています。

だから、そういうご希望の皆さんはぜひ自分の希望をしっかりと医師に伝えて、自分らしい暮らしや食事を維持しながら、良好な血糖管理を維持できるような治療を決めてもらって下さい。そのためには「対等で何でも話し合える医師−患者関係」を構築することが必要になります。

皆さん、頑張って下さい。

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糖質制限食ブームの現代に“食べることの意味”を問う良書

12月 6th, 2016 · 医療人類学(病い体験、illness), 糖尿病食事療法

磯野真穂著『なぜふつうに食べられないのか:拒食と過食の文化人類学』

インターネットが普及し、臨床疫学成績や専門家の見方が大きな影響を与えている。磯野真穂氏はその著書『なぜふつうに食べられないのか』の中で、こうした社会が

    「概念」が「体験」を否定する生き方を生み出す危険性

をきわめて的確に論評している。

糖尿病臨床に従事する医師として、私は糖質制限食へ向かう人たちに注目してきた。
その中にはその食事管理法で良い結果を生んだり、自分らしい生き方を見つける人もいるが、そうでない人々もいた。
本書の中の一節を引用したい。

食べ物についての栄養学的な知識の増加に伴い、田辺が吸収させてよいと考えるものはどんどんと少なくなった。彼女にとって食べ物はもはや「食べたい/食べたくない」ではない。それは、彼女の厳格な健康観に基づいて、「吸収させることを許す/許さない」のいずれかで判断されるようになったのである。

磯野真穂氏は科学的な見方だけで、食を論ずることの危険性をきわめて的確に論評している。糖質制限食に向かう当事者にも、血糖管理を優先する立場から糖質制限食を推す医師、そして栄養バランスの立場からそれを強く非難する管理栄養士にも、文化という立場から食を考えることの大切さを強調したい。

最後に本書から以下の2つを引用したい。

ここまで紹介した女性たちの語りを見ると、食べ物と人生の意味が硬直化し、流動性を失っていることがわかる。食べ物や人生に自ら意味を見いだすことをやめ、他人の作った意味にただ従属していることが分かる。

食のハビトゥスを捨てるということは、自らの人生の軌跡の中で作り出してきた食べ物や生き方に関わる意味付けを放棄し、他人の作り出した意味に従属して生きることと同じなのである。<引用終了>

私の糖尿病食事指導の中心テーマはいつも「あなたが自分らしく食べることと糖尿病管理を両立させること」である。しかし、それはとても難しいことであることをあらためて痛感した。

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インスリン導入におけるPatient-Centered approach

8月 15th, 2016 · インスリン療法, 患者中心主義

 2016年8月12〜14日、静岡県つぼみの会サマーキャンプに参加しました。会場は三島市立「箱根の里」で、静岡県全域および県外から参加した1型糖尿病患児とそのご家族、ボランティア、医療スタッフなど合わせて98名が参加しました。僕は2日目の講演を担当、講演タイトルは『病いの達人になる』でした。講演が終了後、キャンプに参加していた若き糖尿病専門医からの質問に答えながら、気がついたことを書きます。

■サマーキャンプに参加していた若き医師から頂いた質問

最前列に座っていた若き応援医師の先生達に質問を投げかけながらレクチャーを進めていたのですが、「流石、キャンプに参加するような先生は違うなぁ」という回答が返ってきました。そして、講演終了後に頂いた質問がこれ。
Q.日常診療をしている中で、インスリン療法が必要だと思うのですが、なかなか勧めても受け入れて頂けない患者さんがいる訳ですが、そういう場合、どうしたら良いのでしょうか?

回答

「ひとり一人、最良の方法は違うと思うので、一般的な回答をすることは難しいけれど、その患者さんがインスリンを開始できない、様々な要因(心理的、社会的)を探求し、理解できると思えるレベルまで医師−患者関係を深めることができて、『正直、これで患者さんから断られたら、内心かなりショックだよ』と思えるくらいの渾身の想いでインスリン導入を勧めることができたなら、たとえ患者さんからインスリン導入を断られたとしても、それは医師にとっても、患者にとっても、貴重な体験で、ひょっとすると2人の関係性が大きく変わるチャンスにもなる」と答え、医師も患者も大きく成長できた僕自身の体験について語りました。

このように考えると、インスリン導入の説明と同意(Informed choice)は「医師−患者の関係性」という次元で説明できることに気づきます。すなわち、インスリン導入を受け入れない原因を「患者の理解力」や「患者の変化ステージ」のせいにするのではなく、患者に対する自らの想い(患者との関係性)が、まだ患者さんの心に変化を引き起こすレベルには達していなかったと反省するのがインスリン導入におけるPatient-Centered Approachではないかと思った次第です。

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物語能力研究会

6月 26th, 2016 · ナラティブ・ベイスメント・メディスン

リタ・シャロン先生の著述『ナラティブ・メディスン〜物語能力が医療を変える』(医学書院)を読んでいたら、こんな研究会をつくることができたら良いだろうなぁという想いが湧いてきました。すでに日本糖尿病医療学学会という学会があるわけですが、もう少し少人数で、治療が難しい症例を持ち寄って、討論を通じて、互いの物語能力の開発育成をめざすような研究会です。

昔、『糖尿病エンパワーメント』という本が出版された頃には毎日バイブルのように持ち歩き、1日の診療が終わるたびに本を開いてはちょうどクリスチャンが自分の信仰上の問題を解決する聖句を探すみたいに『糖尿病エンパワーメント』を読みあさったものでした。今の僕にとっては、リタ・シャロン先生の「ナラティブ・メディスン』がバイブルです。今日出会った聖句を3つ紹介させて下さい(スライドはクリックで拡大します)。

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