ナラティヴ・カフェ Narrative Cafe

Diabetes Cafe:糖尿病診療におけるナラティヴ・アプローチ

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物語の医療の時代を創りたい

3月 2nd, 2017 · No Comments · ナラティブ・ベイスメント・メディスン

■『がんが自然に治る生き方』:どうしても生きたい理由を持つ

ケリー・ターナーという人の『がんが自然に治る生き方』という本があります(2014年11月出版。プレジデント社。原著は同年4月出版)。著者は本書の中で、『がんが自然に治る生き方』9箇条というものを紹介しているのですが、この中でもっとも心に響いたのが「どうしても生きたい理由を持つ」でした。これは末期ガンになってから考えるよりも、今から考えておくべきテーマではないか!と思った訳です。今の僕が末期ガンになったら、すぐに諦めてしまいそうな気がします。

この話を糖尿病専門外来の診察の中で2人の患者さんに話しました。
1人の患者さんは10.0%→9.0→8.1%と順調に改善していたA1cが、今日初めて8.0%と足踏み状態になった方でした。
中年の独身女性で、少し生きることに疲れた様子にみえました。そこで昨夜の話をしました。

こんな感じで紹介しました。

末期ガンから生還した人たちを面接研究した人が、その著書の中で、末期ガンから生還した人の9箇条というのを書いているんですね。その中で僕は9番目にあった「どうしても生きたい理由を持つ」という項目にピンと来たんですよ。
著者がもっとも印象的であったという患者さんのエピソードを書いているです。その人は科学者なので、毎朝寝室から聞こえる小鳥の囀りに関心を抱いて、「朝の小鳥たちが、なぜ日の出のちょうど42分前からさえずり始めるのか?という理由を科学的に探求し、「木々が光合成を始めて、そこから放出される酸素に反応しているのではないか」と気づいたんです。そして「鳥が鳴き始める日が昇るまでの42分間の空気は特別に新鮮なものであり、ガンが転移した自分の右肺にとっても良いものであろう」と推論するんですよ。つまり、彼は小鳥の囀りから、早朝の空気を吸い込むことで、肺に転移したガンが治るかも知れないという物語を紡いだんですね。

末期ガンを宣告された人って、会社が倒産し、自己破産した人に当てはめることもできるでしょう。
そんな状況に立たされても、この患者さんなら決して絶望しないで、希望の物語を紡ぐことができるんではないかと思うんですよ。苦しいときに、どんな物語を紡ぐことができるか!が問われていると思うんですよね。だから、糖尿病治療がうまくいかないときこそ、どんな物語を紡ぐことができるか?それが問題ですね。

■「先生の今日のお話、マジックです!気持ちがとても軽くなりました」

彼女は診察室を出るとき、こんな風に言いました。
「今日の先生のお話、まるでマジック!」
「気持ちがとても軽くなりました!」
「次回はすごく血糖値を改善させて来たいと思います」

医師は病んでいる患者さんに対して、どんな物語を語るか?
患者さんは病い体験から、どんな物語を紡ぐことができるか?
それが問題なのだと感じた瞬間でした。

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