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患者中心であるとは どういうことか?No3

2月 4th, 2017 · No Comments · 患者中心主義, 糖尿病療養指導

医師が考えるPatient-Centered Careと患者が希望する医療

医療専門職はその職種によって、Patient-Centered Careに対して、それぞれ異なった優先順位を持っています

しかし、それは患者が希望する医療と一致しているでしょうか?

ここでは、医療者が考えるPatient-Centered Careを、患者の希望する医療に近づけ、真のPatient-Centered Careにするためにはどうしたら良いのか、考えてみました。

■医師が考えるPatient-Centered Care

多くの医師は患者の希望を優先することよりも、「血糖改善」や「体重減少」を達成することを優先し、臨床疫学的な根拠のある治療法がPatient-Centered Medicineであると考えます。

そのために多くの医師が「カロリー制限」を指示し、一部の医師は「糖質制限」を強く求めます。しかし、ほとんどの患者は「カロリー制限」も『糖質制限』も望んでいないということに気づくことはとても重要です

患者が血糖管理よりも自分らしい生き方(慣れ親しんだ食事やライフスタイル)を望んでいるのか、あるいは自分らしい生活を犠牲にしても、とにかく早く血糖値を下げたい、体重を減らしたいと望んでいるのか?を明らかにする必要があります。

 

自分らしい食生活を優先して欲しいと願う患者に「カロリー制限食」や「糖質制限食」を求めると、医師−患者間のNegotiationは不調に終わり、アドヒアランスの向上は期待できません。

このような場合は「糖尿病にあなたの生活を従属させるのではなく、あなたらしい生き方、食べ方に糖尿病薬物療法を合わせてみませんか?」という切り口で、薬物療法によって、患者の望む食生活と血糖管理との両立を図ることを提案して欲しいと思います

 

しかし反対に、自分らしい生活を犠牲にしても「血糖コントロールの改善」や「体重減少の達成」を強く求める人たちもいます。そして、こうした人々の多くが『糖質制限食』を希望しています。

このような場合、医療者は糖質制限食に対する自分自身の評価は脇に置いて、自分自身の努力で、糖尿病を改善したいという患者の熱意を評価し、尊重しながら、糖質制限食以外の食事管理法についても紹介し、患者の自己決定に委ねます。

患者のアドヒアランスを最大に高めるためには、それぞれの食事管理法を公正に伝えながら、患者の自己決定に委ねることがもっとも重要であるし、このようなプロセスを経て、患者との良好な信頼関係を構築しておけば、たとえ糖質制限食がうまくいかなかった場合でも、引き続き指導を継続し、代替案を提示することができます。

 

また同じ糖尿病治療を優先する患者であっても、「血糖管理を優先する人」と「体重減少を優先する人」に分かれることにも留意すべきです。

体重減少を優先する患者にはインスリンよりもGLP-1アナログ製剤やSGLT2阻害薬を提案する方が、患者のアドヒアランスが高まることが期待できます。

またライフスタイルや価値観(仕事優先、美味しさと血糖管理の両立)を求める患者にはGLP-1アナログ製剤やweekly製剤、経口薬を併用したBOTなどを提案します。

 

■看護師が考えるPatient-Centered Care

看護師がしばしば遭遇する場面に「飲酒指導」が挙げられると思います。運動不足と大量飲酒が糖尿病の悪化の主たる要因であると考えられる場合、多くの医療者は医学的な物差しに基づいて、禁酒、節酒、休肝日など無理な生活改善を要求し、従うか従わないかという二者択一的な選択を迫る場面がしばしば見受けられます。

ここでも飲酒がその患者の人生に果たす役割を聴き出しながら、無理なく確実に実行できる目標を見つけることが求められます。

 

■管理栄養士が考えるPatient-Centered Care

管理栄養士は職業柄 栄養バランスや食事の質を大切にします。そして、患者が、身体が喜ぶ、健康的で美味しい食生活へシフトして欲しいと願います。しかし、食文化は生まれ育った環境を通じて、長い年月をかけて形成されるもので、なかなか一朝一夕に変えることは容易ではありません。

 

私はいつも患者さんに対して、“美味しさにこだわった食生活を送ることの大切さ“を訴えていますが、中には「食べ物の味にはこだわらない、お腹がいっぱいになればなんでも良い」という人もいて、人が食事に求めるものはひとり一人異なるということを痛感しています

 

効果的な食事指導を行うためには、患者が食事に求めるものが何か?に着目しながら、その方の「食文化」を理解することが求められます。そういう意味からも「好物」を聴き出すことは患者の食文化を理解するのに役立ちます。
しかし、やはり最後は「食育的な要素」を取り入れていくことが必要であると痛感しています。

 

■結語

文末の表のA、Bは【より病気中心】、C、Dは【より患者中心】となっています(クリックで拡大)。

医療従事者はその専門性故に、血糖管理、体重管理、栄養バランスといった医療優先の指導に傾きがちです。

しかし、患者の文化的な背景や価値観などに配慮することで、患者との対話が促進され、お互いがお互いの考え方に影響を受け合う治療的関係を構築し、医療者にとっても患者にとっても最良の結果を生み出すことが可能となると信じたいと思います。

結局、患者中心医療とは、

医療者が「患者が望む医療」を聴き出し、それを尊重し、医学的な観点と摺り合わせ、患者との合意形成をめざす医療である

と言い換えることができます。

合意形成の過程で「こうあるべきである」といった医療専門職の理想が通らない場合もあると思いますが、患者のアドヒアランスが最大となるような提案をしていくことをめざすべきではないかと思います。

医療者が考えるPatient-Centered Care.001 クリックで拡大します

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