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Diabetes Cafe:糖尿病診療におけるナラティヴ・アプローチ

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コンプライアンス不良患者に対する「関係性アプローチ」:ヤングDM患者との対話

3月 15th, 2012 · 2 Comments · 糖尿病療養指導

皆さん、おはようございます。今日は昨日twitterに投稿した記事に、少し手を加え、「コンプライアンス不良患者に対する『関係性アプローチ』」と題して、 Blogにまとめてみました。

 

糖尿病治療はセルフケアによって成立している。従って、僕は可能な限り「説明と同意」を心がけている。しかし、そうした論理実証モードが常に有効であるとは限らない。今日はそんな20代の女性に対するアプローチを紹介する。

 

その20代の彼女のBMIは45。とても太っている。家庭内にも色々な問題を抱えている。当初は順調にA1c5.8%まで改善した。でも、ある決定的な出来事をきっかけに悪化。ビクトーザ→バイエッタを導入したがまったく無効(後に注射していないことが判明)、A1c12%まで上昇した。

 

<説明>

外来受診時、彼女はいつも押し黙っているばかりで、訊かれたことにしか答えない。しかし、「減量に成功しようね!」と彼女の同意を得たつもりで始めたビクトーザ、バイエッタが実際にはあまり注射されていなかったという事実は正直かなり堪えた。7ポイント・3日間血糖測定の結果も食前血糖値が軒並み250~300であったため、GLP-1アナログ製剤継続を諦めた。しかし、無効の理由が「ノンコンプライアンス」にあったという事実を前に、僕は彼女に対するアプローチ・スタイルを根本的に変える必要があると判断した。そこで、それからは徹底して『関係性アプローチ』を心がけることとなった。

 

そこで、やむを得ずランタスを用いたBOTへ変更。アマリール2mg+メトグルコ1500mg+グルコバイ150mgが効いて、現在A1c6.5%を維持している。

そこで今日は「一番どん底のときの心のエネルギーを0点、最高に幸福だったときを100点とすると、今何点くらい?」と尋ねてみた。すると彼女は「60点くらい」と答えた。そこで「この3年間で最高は何点?」と訊くと「60点」と答えた。

 

「今が最高なんだね。じゃぁ心のエネルギーレベルを上げるのには何が必要?」と訊いてみた。彼女は「仕事につくこと」と答えた(以前は介護職についていた)。「仕事で得た良い体験と嫌な体験について教えてくれる?」。彼女は「良かったことは利用者さんに喜ばれたこと、嫌な体験は職員から叱られたり、馬鹿にされたこと」と。

 

<説明>

心のエネルギーを上げるために必要なこととして「仕事に就くこと」という言葉が彼女から返ってきたことに正直驚いた。彼女は毎日、自宅で何もせずに無為な毎日を送っているわけだが、実は彼女も社会との接点を求めていたんだと気づいた。

 

「介護の現場って、とても素晴らしい人にも出会えるけれど、あまり見たくない場面にも遭遇するよね」「でも、それはこの世界の象徴でもあるんだ。世界は悪い人が居たり、良い人がいたりして成り立っている。嫌な人に出会うから良い出会いを幸福と感じる。そうして君は世界を理解していくんだ」

 

「大人になるってことはそういうことなんだ。そうやって、君は少しずつ大人になっていく。僕の言っていること、分かる?」と訊くと、彼女は「分かると思う」と答えた。糖尿病治療に社会的文脈を取り入れることはとても大切です。彼女を通して、その一端を理解していただけたら幸いです。

 

以上です。

今日の会話で、僕ははじめてオープン・クエスチョンを多用してみました。今までなら「やれそう?」「つらくない?」などのクローズド・クエスチョンばかりを投げかけ、彼女はただ首を縦に振るだけという対話が続いていたからだ。しかし、今日はオープン・クエスチョンを取り入れたことで、少しだけ今までよりも彼女の心に近づくことができたと感じている。

「関係性アプローチ」の実際が少しでも伝えられたら幸いです。

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