ナラティヴ・カフェ Narrative Cafe

Diabetes Cafe:糖尿病診療におけるナラティヴ・アプローチ

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1型糖尿病患者としての専門性を磨く(講演速記録)

7月 5th, 2018 · No Comments · 1型糖尿病, カーボカウント

2018年7月1日、東京衛生病院7階カフェテラスで『1型糖尿病患者さんとそのご家族のためのランチ会』を開催しました。当院通院中の1型糖尿病患者さんとそのご家族が対象です。

ランチ会タイトル.001

 

 

 

 

 

 

 

 

当日のプログラム

第1部:講演会
講演1:杉本正毅「1型糖尿病患者としての専門性を磨く」
講演2:一神秀介さん「カーボカウントと僕が辿った道のり」
講演3:岡田果純さん「飛騨高山ウルトラマラソン-人生山あり谷あり」

第2部:先輩1型糖尿病カップルからの応援動画メッセージ観賞会

今日は「ランチ会速記録」から僕の講演内容をご紹介したいと思います。

■専門性とは?

①技術的専門性 ②内面的な専門性
→1型患者さんが幸せに生きていくためには、最終的には内面的な専門性の方が大事だと思う(観客:真剣なまなざし)。

発症したばかりの1型糖尿病患者は綱渡りの連続。
ご家族からすると、奥さん元気だしって感じで理解できないかもしれませんが(観客:笑)

ご家族向けに糖尿病の病態を説明。食事を食べる→インスリン分泌→肝臓および筋肉の糖取り込み&グリコーゲンとして貯蔵→血糖値の低下。運動→末梢の筋肉のグリコーゲンが分解して糖を消費→膵臓からグルカゴン分泌→肝臓のグリコーゲン分解→糖放出→筋肉の糖取り込み。。。

健常者はこうした複雑な反応がすべて自動的に行われているのです。でも1型の患者さんは自分の頭で考えて自分で行わなければなりません(観客:真剣なまなざし、うなづき)。

健常人は自分のことが信じられなくても、自分の身体が信じられないということはないでしょう。しかし、1型糖尿病という病気は自分の身体が信じられない、という経験をすることになるのです(患者さんたち:深いうなづき)
→だから脳内膵臓移植をすることが大事!=Think like a pancreas

「とっても大切なkey messageなので、僕に続いて、皆さんも大きな声で復唱して下さい」

「think like a pancreas!」 みんなで一緒に読み上げる。ぴったり息が合う。

膵臓のように考える今日、皆さんに伝えたい最初のメッセージは「膵臓のように考えなさい!」です。
このことが1型糖尿病と2型糖尿病を区別するもっとも大切な違いなんです。
1型はとにかく“膵臓が考えるように考える事ができる”ようになれば良いのです。

 

 

 

■1型糖尿病患者の技術的専門性

脳内膵臓移植をする上で必要なのがカーボカウントというスキルです。
医者が糖尿病を管理するのではなく、患者さんが主体的に行う。医師はそれをサポートする。
1型患者さんにとってカーボカウントは食事療法というより、インスリン療法の一部なのです。
食品交換表に準拠していても、糖質量は大きく異なります。
高カロリーだけれども糖質量58gの洋食メニューと低カロリーだけれど糖質量95gの和食を例に、I/C比 1単位/カーボとした場合、それぞれのインスリン必要量は「6単位」「9.5単位」となり、カーボを正確に見積もることが大切であることを示す。
各栄養素が血糖応答に与える影響(観客:身を乗り出して話を聞いている、真剣なまなざし)
超速攻を打つ時は炭水化物量を参考にします。
しかし、3時間以降のコントールはたんぱくと脂質の影響を受けるので、SMBGを使って経験を積みながらコントロールしていく必要があります。
ぶっかけうどんと天ぷら月見山かけうどんの例を用いて、栄養素ごとの血糖応答について説明。
食事を見る度に自然とこんな風に考えることが “Think like a pancreas”を実践するということです。
(観客:分解して考えるという例がわかりやすかったのか、深いうなづき)
インスリンカーボ比を用いれば、血糖値のピークはコントロールできるが、脂肪と蛋白の影響をコントロールするのは難しい。
カーボカウントは糖質量のみに合わせたコントロールなので、脂肪とタンパク質のコントロールは個人の経験でやっていく必要がある(ベテラン患者たち:深いうなづき)。
食べたい料理に合わせて上手にインスリンを合わせるのがType1スタイルです。
かんたん糖質計算法を紹介。
肉じゃが、オムライスの例を出して説明。カーボカウントはカロリー計算よりも簡単であることを実演。
コンビニ弁当を買った時などはいきなり答え(成分栄養表示)をみないで自分で計算してから、答を確認して、正確に糖質を見積もるトレーニングをしてほしい(観客:うなづき)。

■1型DM患者の内面的専門性

1型になると技術的な部分の問題、身体的な問題、スピリチュアルな問題が出てくる。

2型との混同などによる誤解に1型患者は一番傷つく(患者さん:深くうなづく)。

家族にも「糖尿病なのに甘いものを食べていいの?」といわれてしまったりすることがある、、、

自己免疫性高血糖症など1型糖尿病という名前を変えようという患者さん側の運動もあるが、まだ改名には至っていない。

その人に合わせたインスリン治療をすれば良いが、医療者によっては正論を言う人もいる→糖尿病治療に正解・正論はない。
自分の気持ちがわからないまま、病気と向き合っている患者さんも多くいる。
なぜ頑張らないの? なぜもっと血糖測定をしないの?
そう言われても、僕にもわからない。医療者の助言はすべて今の僕にとっては気が重い。
こういう若者に対して、どのように向き合ったら良いのか?それが全国の医療従事者が抱えている大きな課題です。

絵本の紹介スライド.001 1型糖尿病で摂食障害になってしまう患者さんは多い。その患者さんが書いた絵本を紹介。(先生;時間があと8分しかない…観客;笑)
ステキな絵を描いてくれたヒロインは増田さんという少女です

 

最初は模範的な患者さんであった増田さん。
褒められるのが嬉しくて、とっても頑張った。
でも次第に家族が病気のことを心配して干渉し てくる、彼女から美味しいものを取り上げるようになった。

2型DMと間違われる 周囲からは2型と混同され、誤解をされ、とても傷ついた。とくに家族にもわかってもらえないのが許せなかった、、、(観客:真剣なまなざし、うなづき、悲しそうな表情)
そこから隠れて食べるようになり、過食に。そして爆発。

 

 

 

 

2回からばらまくある日、彼女は毎日記録していた血糖測定記録を2階からばらまきます。

お母さんも悲しそうにするし、腫物にさわるようになってしまった。お母さんの傍にいたいのに今はそこが一番辛い場所に・・・。もう行き場がなくなった。
→九州大学心療内科へ入院。

 

 

心療内科にいき、痩せれば糖尿病になる前の自分になれると思っていたが、それが自分の思い込みと気づき、家族面談も経て家族との関係も修復された。

完璧主義の彼女、痩せたら、発病前の自分に戻れると思っていた増田さんは先生との面談によって、ようやく新しい自分を発見します。

■参考資料

「糖尿病 こころの絵物語」時事通信社出版局、絵 増田さゆり、文 瀧井正人、編集 日本糖尿病協

 

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