ナラティヴ・カフェ Narrative Cafe

Diabetes Cafe:糖尿病診療におけるナラティヴ・アプローチ

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1型DM女子からの質問にどう答えますか?

5月 9th, 2018 · 1型糖尿病

ある日、発症して数ヶ月の1型DM女子(独身)から次のような質問を受けました。

「先生、1型DMの人はだいたいHbA1cを何パーセント以下にしなければならないのですか?」

皆さんなら、どう答えますか?
僕は思いつくまま、だいたいこんな感じで答えました。

A1cが何パーセント以下が良いか?
う〜ん、それは人それぞれでしょう。
8%以下ならOKって思っている人もいる。
そうかと思えば、「俺は健常者には絶対に負けたくないから6%未満にするんだ」と言う人もいるかも・・・。
「幸福なときには6%以下、人生、辛くなったら7%以下なんて無理だから、まぁ8%未満をめざせばイイさぁ」という人もいるかもね。

君に向かって「A1c<7%をめざしましょう」って言うことは簡単だよ。
でも、それって、どこか『正しい人生』みたいな響きがあると思うんだよ。
つまり、女の子は大学を卒業したらOLになって、遅くとも29才までに結婚して、30才で第1子を産む。それが『正しい人生』みたいな響きだよ。
『正しい糖尿病管理』は『正しい人生』『正しい食事』という表現と同じくらい胡散臭い表現だ。

その人がその人らしく生きていくことが目標でしょう。
A1cの目標値もそれと同じ。

彼女は「なるほど〜、A1cは何パーセントが良いっていう正解はないってことですかね」と言ったので、僕は答えました。

そう。それは、君が等身大の君として、一生懸命生きながら、自分で見つけていくものです。

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ナラコロ事前ミーティング

3月 4th, 2018 · お知らせ, ナラティヴ・アプローチ(病いの語り、意味)

第6回 ナラティヴ・コロキウム
2018年3月11日9:30〜12:30
自主シンポジウム:病いの語りを臨床にどう活かすか?
今日は法政大学市ヶ谷キャンパスポワソナードタワー16階で、このシンポジウムに参加する5人のメンバーが集まって、シンポジウム内容について事前ミーティングを行いました。
互いに専門や立場は違っても、初対面とは思えないくらい、楽しく和気藹々と討論することができました。法政大学の鈴木智之先生はアーサー・W・フランクの名著『傷ついた病いの語り手』の翻訳者です。当日は社会学の立場から病いの当事者を代表して、医療の現場に対して厳しいコメントを頂けることを期待しています。患者の言葉や体験が尊重され、医療専門職と患者がcollaborateできる社会を実現する為の第1歩となることを祈念しています。
当日、ご都合の付く方は是非駒澤大学深沢キャンパスまでおいで下さい。
メンバーは以下の5名です。
杉本正毅 バイオ・サイコ・ソーシャル糖尿病研究所
「医療人類学の立場から”患者中心医療”について提言する」
能勢謙介(任意患者団体 マイスター・ジャパン共同代表)
「1型糖尿病患者会代表の立場から医療専門職に伝えたいこと」
濱 雄亮(東京交通短期大学)
「1型糖尿病者における病いの語り:医療人類学の立場から医療者に期待すること」
中村英代(日本大学文理学部社会学科)
「依存症者における病いの語り―ナラティヴ・アプローチの立場から医療専門職に伝えたいこと」
鈴木智之(法政大学社会学部社会学科)
「臨床社会学の立場から臨床家への提言」

http://tomishobo.com/naracollo.html

 

 

 

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クスリたち君が主役の演劇『糖尿病薬劇場】〜経過報告

11月 1st, 2017 · 糖尿病療養指導

18:30に集合して、みんなで『糖尿病薬劇場』のミーティングを行いました。今日は「注射治療グループ」の台詞づくりを行いました。もっぱら生物医学モデルやセオリーに基づいて発言する医療者たち。それに対して6人のクスリ君たちは患者である大盛くんの生活を尋ね、気持ちを確かめながら、優しく治療法を提案していきます。

■注射グループの台詞づくりを終えて感じること。

注射グループの台詞を書き終えて驚いたことがあります。飲み薬グループとは台詞の内容が大きく異なったものになりました。

例えば、インスリン君の自己紹介は1921年のトロントにまで遡りました。1923年から今日に至るまでのストーリーがとうとうと語られました。これは予想外の展開でした。またインクレチン君の自己紹介も飲み薬君たちとはひと味違った説明となりました。

■難しい言葉や概念の説明

糖毒性、インスリン抵抗性、インクレチンなどの説明は、クスリ君たちに替わって、正論博士が担当することとしました。クスリ君たちにはなるべく「日常会話」「ローカルな言語」を使って、劇を進行させていこうと思います。

今日でシナリオの8割は完成させることができました。クスリ君たちが主役の演劇なんて、果たしてモノになるだろうか?と心配しながら始めましたが、予想以上の出来映えにみんな満足したし、なによりも普段使わない脳の領域を使う作業に深い充実感を感じました。

演劇を通して、患者さんの「薬に対する感情や理解度」が、どんな風に変化するのか?興味深いです。

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演劇で糖尿病治療を学ぶ『糖尿病薬劇場』を始動します!

11月 1st, 2017 · 糖尿病療養指導

クスリ君たちが主役の演劇を企画中です。

毎回、登場する患者さんに合わせて、クスリ君たちが力を合わせて、患者さんを励まし、相談に乗りながら、治療法を提案していく筋書きにしたいと思っています。

医療者は常識や医学的なロジックに囚われた指導をしますが、クスリ君たちは患者さんの気持ちに寄り添いながら提案をしていきます。そんな演劇を糖尿病教室に取り入れたいと思っています。

目的は

①患者さんに糖尿病治療や糖尿病薬のことをより深く理解してもらうこと。

②クスリ君を演じることで、医療スタッフに患者中心の療養指導を学んでもらう。

③糖尿病治療、糖尿病薬を患者さんたちに理解しやすい「ローカルな言語」で説明するトレーニング

第1回はA1c12%、BMI 35のトラック運転手を相手に「経口薬グループ」と「注射療法グループ」に分かれて、それぞれが治療上の提案をする予定です。

最終的に、どちらの治療が良いのか!?選ぶのは、患者役のスタッフです。クスリ君たちに患者の心を動かすような提案を競い合ってもらいます。

昨夜、みんなで「経口薬グループ」の台詞づくりの作業をしましたが、とても楽しい時間でした。

この劇で、はじめて監督と演出家を経験する予定です。
来年3月の院内のDM教室での上演に向けて、じっくりと準備をしていきたいと思います。

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結果にコミットしてくれる患者さんを育てる

10月 10th, 2017 · 糖尿病療養指導

今日は、処方変更の結果を、医師と一緒に心配してくれる患者さん達の話題です。

医学的な事項を患者さんが理解できる言葉で説明して、患者さんに自己決定してもらうことを『インフォームド・チョイス』と言います。詳しくはスライド(クリックで拡大)を参照していただきたいと思いますが、「医師が『患者』を管理する」と考える伝統的な診療スタイルではなく、「患者さんが『糖尿病』を管理する」と考えます。従って、患者は医師に従う存在ではなく、医師の協力のもと、最終的には自分自身で決定する存在であると考えます。こうした関係では、医師には患者が自己決定できるようになるまで、分かりやすく説明する義務が生じます。

そして、インフォームド・チョイスを徹底して、決定共有を推進する外来では、患者さんが「結果」にコミットし、医師と一緒に心配してくれるようになります。

メトフォルミン(商品名メトグルコ)は2型糖尿病治療の中核薬剤です。250mg錠=9円90銭、500mg錠=16円70銭と安価な薬ですが、多くのエビデンスを持ち、世界中の糖尿病医からもっとも信頼・尊敬されている薬剤のひとつです。メトフォルミンは投与量に依存して血糖降下作用を表しますが、腎排泄性薬剤なので、腎機能に応じて減量しなければなりません。従って、糖尿病医が毎日経験していることは「腎障害のある患者さんのメトグルコ投与量の調整」です。

例えば、A1c>9%の患者さんのメトグルコを漸次増量し、A1cを改善させることに成功すると、その後 腎機能が悪化してくることがあるし、反対にeGFR<50となって、メトグルコ500mg/日へ減量すると、メトグルコ著効例(responder)の患者さんの場合、一気にA1cが上昇してくる場合があります。
このように、メトグルコ投与量と連動する「A1c値」と「血清クレアチニン(eGFR)」は糖尿病医を悩ませる、もっともありふれた問題で、診察の際、いつもA1c値とeGFR値という2つの検査値を眺めながら溜息をつくことになります。
しかし、僕の外来では「腎機能とメトグルコの関係」を詳細に説明し、理解してもらう努力をしています。そうすると、その説明を理解できる患者さんは、メトグルコ投与量変更後の結果について、医師と一緒に悩み、心配してくれるのです。
例えば 腎保護のためにメトグルコを減量した患者さんの場合、次の診察時、患者さんの方から「前回、メトグルコを減らしていただきましたが、今日の私のA1c値は大丈夫でしょうか?」と尋ねてくれます。
また「血糖コントロールが悪化したため、やむを得ず、メトグルコを増量した場合も、「先生、前回メトグルコを増量しましたが、今日の私の腎機能は大丈夫でしょうか?」と尋ねてくれます。そして「腎機能、悪化していませんよ」と答えると「あぁ〜、良かった!」と胸を撫で下ろして下さいます。
このように、患者さん自身が医師と一緒になって、処方変更の結果にコミットしてくれる訳です。

僕は処方変更の結果にコミットしてくれる、こうした患者さんを本当に頼もしいと感じています。

スライドを参照して下さい(クリックで拡大します)。

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