ナラティヴ・カフェ Narrative Cafe

Diabetes Cafe:糖尿病診療におけるナラティヴ・アプローチ

ナラティヴ・カフェ Narrative Cafe header image 1

ナラティヴ・アプローチによる禁煙支援

5月 29th, 2018 · ナラティヴ・アプローチ(病いの語り、意味)

5月27日「動機付け面接(MI)」のセミナーに半日だけ参加しました。その祭、禁煙支援の面接事例の演習を学習しました。そこで、MIのテクニックの考えも採り入れながら、思いつきですが、ナラティヴ・アプローチ(NA)による禁煙支援の実際を考えてみました。いかがでしょうか?

■医学モデルの相対化

患者と医師の立場の違いを超えるためには、医師自らが自分の解釈モデルに固執することを止め、それ(患者の考え)もひとつの考えと、自分の考えを相対化して、患者に示すことが、対話を発展させるためにとても重要です。

もしも皆さんが「喫煙は健康に悪い」と思いながら、相談者と接しているとしたら、あなたは心の中で無意識にこう思っている筈です。
「自分は正しくて、相手は間違っている。だから、なんとかそれを正さなくてはいけない」と。こうした「上から目線」は相手に無言のプレッシャ−となって伝わります。→MIでいうならサステイン・トークを誘発しやすくなります。
でも「喫煙は健康に悪い」という意見はあくまで【医学的観点】であり、それは様々な物差しの1つに過ぎないと考えて、喫煙者の生き方に十分に敬意を払いながら、患者さんと向き合うなら、2人の対話空間は大きく広がり、対話が促進されます。

■相対化スキルの対話例

例えば、こんな風に切りだしてみたらどうでしょうか?

「Aさんは心筋梗塞になってもタバコを止めたくないのですよね。私たち医療従事者はどうしても健康を中心に考えてしまうので、タバコを吸っている方を見るとついつい禁煙を勧めたくなってしまいます(^^;)。でも、きっと愛煙家の方にしか分からないタバコ愛というものがあるんでしょうね。もしも差し支えなければ、それを教えていただけませんか?例えば、ニュースキャスターの筑紫哲也さんはこんなことを言っていましたね。
「百害あって一利なしと言うけど、文化は悪徳が高い分、深い。(たばこは)人類が発明した偉大な文化であり、たばこの代わりはありませんよ。これを知らずに人生を終わる人を思うと、何とものっぺらぼうで、気の毒な気がしますね。肺がんに直結しているようだけど、たばこは引き金で、本当の原因はストレスなんです」

「タバコで死ぬのなら本望だ」とも受け取れる彼の言葉は負け惜しみのようにも聞こえますが、でも“究極のタバコ愛”の表明のようにも思える訳ですよね。

「Aさんは筑紫哲也さんの言葉に深い共感を覚えますか?それともAさんの場合は筑紫哲也さんとは違ったタバコ愛ですか?その当たりのお気持ちを差し支えなければ教えて下さい」

このように聴かれたら、本当の愛煙家なら、感動して、自分のタバコ愛をとうとうと語り出すかも知れません。中には「共感はしますが、私は肺がんになっても吸いたいとは思いませんね」という人もいるかもしれません(→MIならチェンジ・トークに繋げることができます)。しかし、中には「彼は私の気持ちを代弁してくれています。私がタバコを吸い続けざるを得ないのはまさにこのタバコ愛ですよ。でも、やっぱり彼も心の奥底では肺がんで死にたくはなかったと思いますね」と言うかも知れません。

■まとめ

このように愛煙家のタバコに対する「意味付け」が溢れ出すような対話を導くことに成功したら、仮にすぐに禁煙行動に繋がらなかったとしても、私たちの相手の説明モデル(禁煙継続の理由)に対する敬意が、患者さんに新しい気づきや新たな妥協点を見出す可能性を高めることができるのではないかと考えます。
このようにNAは「スキル」というよりは「態度・姿勢」が問われるアプローチと言えます。

長文にお付き合いいただき、有り難うごいざいました。

 

→ No CommentsTags: ·

1型DM女子からの質問にどう答えますか?

5月 9th, 2018 · 1型糖尿病

ある日、発症して数ヶ月の1型DM女子(独身)から次のような質問を受けました。

「先生、1型DMの人はだいたいHbA1cを何パーセント以下にしなければならないのですか?」

皆さんなら、どう答えますか?
僕は思いつくまま、だいたいこんな感じで答えました。

A1cが何パーセント以下が良いか?
う〜ん、それは人それぞれでしょう。
8%以下ならOKって思っている人もいる。
そうかと思えば、「俺は健常者には絶対に負けたくないから6%未満にするんだ」と言う人もいるかも・・・。
「幸福なときには6%以下、人生、辛くなったら7%以下なんて無理だから、まぁ8%未満をめざせばイイさぁ」という人もいるかもね。

君に向かって「A1c<7%をめざしましょう」って言うことは簡単だよ。
でも、それって、どこか『正しい人生』みたいな響きがあると思うんだよ。
つまり、女の子は大学を卒業したらOLになって、遅くとも29才までに結婚して、30才で第1子を産む。それが『正しい人生』みたいな響きだよ。
『正しい糖尿病管理』は『正しい人生』『正しい食事』という表現と同じくらい胡散臭い表現だ。

その人がその人らしく生きていくことが目標でしょう。
A1cの目標値もそれと同じ。

彼女は「なるほど〜、A1cは何パーセントが良いっていう正解はないってことですかね」と言ったので、僕は答えました。

そう。それは、君が等身大の君として、一生懸命生きながら、自分で見つけていくものです。

→ No CommentsTags:

ナラコロ事前ミーティング

3月 4th, 2018 · お知らせ, ナラティヴ・アプローチ(病いの語り、意味)

第6回 ナラティヴ・コロキウム
2018年3月11日9:30〜12:30
自主シンポジウム:病いの語りを臨床にどう活かすか?
今日は法政大学市ヶ谷キャンパスポワソナードタワー16階で、このシンポジウムに参加する5人のメンバーが集まって、シンポジウム内容について事前ミーティングを行いました。
互いに専門や立場は違っても、初対面とは思えないくらい、楽しく和気藹々と討論することができました。法政大学の鈴木智之先生はアーサー・W・フランクの名著『傷ついた病いの語り手』の翻訳者です。当日は社会学の立場から病いの当事者を代表して、医療の現場に対して厳しいコメントを頂けることを期待しています。患者の言葉や体験が尊重され、医療専門職と患者がcollaborateできる社会を実現する為の第1歩となることを祈念しています。
当日、ご都合の付く方は是非駒澤大学深沢キャンパスまでおいで下さい。
メンバーは以下の5名です。
杉本正毅 バイオ・サイコ・ソーシャル糖尿病研究所
「医療人類学の立場から”患者中心医療”について提言する」
能勢謙介(任意患者団体 マイスター・ジャパン共同代表)
「1型糖尿病患者会代表の立場から医療専門職に伝えたいこと」
濱 雄亮(東京交通短期大学)
「1型糖尿病者における病いの語り:医療人類学の立場から医療者に期待すること」
中村英代(日本大学文理学部社会学科)
「依存症者における病いの語り―ナラティヴ・アプローチの立場から医療専門職に伝えたいこと」
鈴木智之(法政大学社会学部社会学科)
「臨床社会学の立場から臨床家への提言」

http://tomishobo.com/naracollo.html

 

 

 

→ No CommentsTags:

クスリたち君が主役の演劇『糖尿病薬劇場】〜経過報告

11月 1st, 2017 · 糖尿病療養指導

18:30に集合して、みんなで『糖尿病薬劇場』のミーティングを行いました。今日は「注射治療グループ」の台詞づくりを行いました。もっぱら生物医学モデルやセオリーに基づいて発言する医療者たち。それに対して6人のクスリ君たちは患者である大盛くんの生活を尋ね、気持ちを確かめながら、優しく治療法を提案していきます。

■注射グループの台詞づくりを終えて感じること。

注射グループの台詞を書き終えて驚いたことがあります。飲み薬グループとは台詞の内容が大きく異なったものになりました。

例えば、インスリン君の自己紹介は1921年のトロントにまで遡りました。1923年から今日に至るまでのストーリーがとうとうと語られました。これは予想外の展開でした。またインクレチン君の自己紹介も飲み薬君たちとはひと味違った説明となりました。

■難しい言葉や概念の説明

糖毒性、インスリン抵抗性、インクレチンなどの説明は、クスリ君たちに替わって、正論博士が担当することとしました。クスリ君たちにはなるべく「日常会話」「ローカルな言語」を使って、劇を進行させていこうと思います。

今日でシナリオの8割は完成させることができました。クスリ君たちが主役の演劇なんて、果たしてモノになるだろうか?と心配しながら始めましたが、予想以上の出来映えにみんな満足したし、なによりも普段使わない脳の領域を使う作業に深い充実感を感じました。

演劇を通して、患者さんの「薬に対する感情や理解度」が、どんな風に変化するのか?興味深いです。

→ No CommentsTags:

演劇で糖尿病治療を学ぶ『糖尿病薬劇場』を始動します!

11月 1st, 2017 · 糖尿病療養指導

クスリ君たちが主役の演劇を企画中です。

毎回、登場する患者さんに合わせて、クスリ君たちが力を合わせて、患者さんを励まし、相談に乗りながら、治療法を提案していく筋書きにしたいと思っています。

医療者は常識や医学的なロジックに囚われた指導をしますが、クスリ君たちは患者さんの気持ちに寄り添いながら提案をしていきます。そんな演劇を糖尿病教室に取り入れたいと思っています。

目的は

①患者さんに糖尿病治療や糖尿病薬のことをより深く理解してもらうこと。

②クスリ君を演じることで、医療スタッフに患者中心の療養指導を学んでもらう。

③糖尿病治療、糖尿病薬を患者さんたちに理解しやすい「ローカルな言語」で説明するトレーニング

第1回はA1c12%、BMI 35のトラック運転手を相手に「経口薬グループ」と「注射療法グループ」に分かれて、それぞれが治療上の提案をする予定です。

最終的に、どちらの治療が良いのか!?選ぶのは、患者役のスタッフです。クスリ君たちに患者の心を動かすような提案を競い合ってもらいます。

昨夜、みんなで「経口薬グループ」の台詞づくりの作業をしましたが、とても楽しい時間でした。

この劇で、はじめて監督と演出家を経験する予定です。
来年3月の院内のDM教室での上演に向けて、じっくりと準備をしていきたいと思います。

→ No CommentsTags: